大阪家庭裁判所 昭和45年(家)5886号・昭45年(家)5885号 審判
〔主文〕本件申立はこれを却下する。
〔理由〕本件調査の結果によると次の事実が認められる。
一 申立人は昭和一七年一二月四日青木弘一、同信子の長男として出生し、現在○○株式会社の社員として勤務しているものであるが、昭和四五年三月頃両親に対し申立外青木俊子(旧姓、田中)と結婚したい旨申出たところ、両親は、青木俊子には実父母も生存しており、同女の養父母には他に子がない点から考えて、同女を長男である申立人の嫁に迎えたのでは、将来自分達夫婦の面倒を充分みてもらえぬであろうし、又同女の性格の強さから考えて申立人には不似合だと判断し、若し申立人が青木俊子と結婚するのなら、自分らの財産を申立人に与えることはできない旨主張してこれに反対したので、申立人は青木俊子と結婚する為には、それも止むを得ない旨答えていた。
二 そして申立人の両親が、昭和四五年七月二七日を申立人と自分達のすすめる女性との見合い日と定めたところ、申立人はこれを嫌つて、同月一八日両親の許を家出し、両親には内密に同月二六日を青木俊子との挙式の日と定め、右結婚式の式場の予約までした。ところが、事前に両親が申立人の勤務先を訪れて右事実を知つて憤慨し、直ちに申立人の了承を得ずに前記式場の予約を取り消した為、当日申立人らが結婚することは出来なかつた。
三 その後申立人、同人の両親並びに上司らが、昭和四五年八月三日勤務先近くの料亭で、申立人の結婚問題につき話しあつたが、申立人が翻意しないのを見た両親は、その場で、かねて用意して来ていた本件遺留分放棄申立書の記載事項中、申立人の署名捺印欄、申立人欄を除くその他の各所定欄には既に自分達で記入済みの家事審判(調停)申立書二通(当家庭裁判所受理番号第五八八五号、同五八八六号)をとり出し、申立人に対しかねての約束通り、申立人が青木俊子と結婚するなら自分らの財産を与えられないから、これら遺留分放棄申立書に署名捺印するよう申し向け、申立人もこれを了承して各申立書に自署、捺印し、翌四日同申立書が当裁判所に提出されたものであり、その後同月一一日申立人は青木俊子と結婚した。
以上の事実が認められる。そしてその事実から判断すると、申立人は審判期日に任意に出頭し且つ平静に遺留分を放棄する旨申述べているものの、申立人と同人の両親の間では約六ケ月間に亘り青木俊子との結婚問題に関しかなり激しいやりとりや干渉が繰りかえされて来た事情がうかがわれ、又、他に申立人が本件申立をなすに至つた動機も見当らない点から考えると申立人が本件申立をなすに至つた理由は、やはりかかる両親からの自己の結婚問題に関するかなり強度の干渉の結果と言わざるを得ない。そうすると、本件申立は憲法第二四条第一項の趣旨に照らしこれを許可するに足りる合理的な理由があると認められない。
よつて本件申立はこれを却下することとし、主文のとおり審判する。
(朝田孝)